ユーロビートじゃ踊れない

CDラックと本棚です

三国隆三 - 死刑囚 極限状況を生きる

 

死刑囚―極限状況を生きる (ディスカヴァーebook選書)

 

死刑廃止派の本。書かれたのは2004年なのでタイムリーではないけれど、光市や池田小学校の事件は入っていた。
やはり、「世界に比べて日本は遅れている後進国だ」「だから廃止するべきだ」という答えありきで終始反対論を述べていて、被害者や被害者家族への言及は合わせて数ページしかなく、「つらいのは分かるけど世界に比べて遅れているから我慢してよね」という論調で、自分の主義主張>>>>>>被害者家族の感情となっている。全く賛同できない。
またご多分に漏れず「冤罪(無実)の可能性がある限り死刑は避けるべき」と書いているが、殺された人たちは無実なのに日常生活の中で突然私人処刑されている。いわば冤罪と同じなわけで、冤罪で処刑される人は本当に不憫だし絶対に避けなければならないが、殺人が行われている以上、冤罪死刑のみ廃止することには違和感を感じる。
被害者や被害者家族のための死刑制度維持のトレードオフで、10年で数人の命の犠牲は、あり得るというのが、今の自分の考えである。

 

ただ本としては本当によく出来ていて、国内外の多くの事例をあげていたり、各国の処刑方法も記載されていて、資料性は非常に高い。

草薙厚子 - 大人たちなぜ、子どもの殺意に気づかなかったか?

 

 

全体的には広汎性適応障害についての内容だった。少年犯罪パートは面白かった(不謹慎だが)。特に大阪姉妹殺人事件についてはネットで詳細を知り、その悲惨さに大きなショックを受けた。適応障害だから、判断能力がないから、という理由で無罪になる可能性があると思うと恐ろしくなるな。

張江泰之 - 人殺しの息子と呼ばれて

 

 

北九州連続監禁殺人事件の息子のインタビュー。小学生時代に監禁された人たちが同じ家の中で殺され、バラバラにされ、鍋で煮込まれ、ミキサーにかけたドロドロの物体になり、それを漏斗を使ってペットボトルに入れてトイレや海に遺棄したという。息子はそれが何か分からないとはいえ、ペットボトルにつめ替える作業まで行ったという。また自分も父親から通電され、出生届未提出だから無戸籍で、事件発覚する10歳まで学校にも行かないで育った。

そんな彼が、過去に苦しみながらも、過去を完全には忘却しないながらも、自分のルーツに悩みながらも、自分の未来を見据えて過ごしてきた生き方、考え方は本当にすごかった。自分なら間違いなく堕落してただろう。

小さいことでくよくよしてる場合じゃない、と背中を押されるようなそんな本だった。

平野啓一郎 - 死刑について

 

全く同意できないという意味では☆、さすが読みやすい文章という意味では☆☆☆。

 

死刑賛成→反対論者になったいきさつを知りたかった。
彼の意見を腐すわけではないけれど、死刑反対に舵を切った主な理由、そしてきっかけが「自分のイデオロギー(リベラル)と死刑賛成が合致しないから」「自分のイデオロギーと対局にいる保守派と死刑賛成の意見はしっくり合致するけど、リベラルと死刑賛成はしっくり来ない、世界では死刑廃止してる国が多く欧米のリベラルは死刑反対してる、のになぜ自分は?」が死刑反対論者に変わったきっかけ。それ以降の死刑廃止の理由付けはすべて彼の思想を優先していて後付けに感じる。特に被害者家族へのケアの言及はほぼ皆無。欧米と同じく、反対多数でも政治決断で廃止をすれば、日本もなんとかなるだろうという浅い考え方。日本は(も?)、仇討ちの文化と、万の神の考え方、因果応報の文化が色濃いから、日本人総体として心情的に死刑廃止は無理だと思う。

例えば、自分の中学生の娘(成人でも小学生以下でもいい)が街の輩に拉致監禁されて、原形を留めないほど顔面を殴られ、タバコを押し付けられ、膣に異物を挿され、その姿を見て笑われ、輪姦され続け、助けを請うても決して許されず、物音を出したらまた殴られ、自分の排便を食わされ、衰弱死したら野山に棄てられ、野犬に食われた姿で見つかり、裁判では反省の色も見せない、それでも相手の死を望まない。それを断言できるのかを問いたい。

 

宇佐美りん - 推し、燃ゆ

炎上した波に影響されるアイドルを描いてるのかと思ったら、炎上したアイドルを推して壊れていくオタクの話だった。
思ってたのと違った。

 

 

 

小塚野形 - 地獄で生きたる!―死刑確定囚、煉獄の中の絶叫

とある死刑囚の獄中記を読みやすくリライトしたモノ、というプロローグだったが、結局2人の死刑囚をリミックスして生まれた非実在人物の話だった。あまり良くないだまし討ち。
死刑囚の本を何冊か呼んだけど、結局、突然許しを請うても問答無用に絶命させられた複数の被害者のことを考えると、死刑は妥当だし処罰感情はさらに高まることしかない。

「地獄で生きたる」なんてとんでもない。しもやけにはワセリン、風邪には風邪薬を出してもらえる、読みたい本は借りれ、毎朝新聞を読める天国でしかない。

 

 

 

高野秀行 - 西南シルクロードは密林に消える

地理や地政学がほとんど分からないまま読了したけど、結局高野さんの転生モノとしてめちゃめちゃおもしろいんだ。

 

 

 

 

中溝康隆 - 現役引退――プロ野球名選手「最後の1年」

有名選手の最終年にフォーカスしたという縛りがこの本をより面白くさせた。
FAがない時代は今よりも大型トレードが活発で、選手からのトレード志願も多かったんだなと言うのが印象的だった。

 

 

 

伊坂幸太郎 - ロングレンジ

伊坂幸太郎にしては珍しい女の子(20代 既婚)のストーリーで、なかなかかわいらしくてよかった。

もう一つの短編のアイネクライネは、既視感があったと思ったらアイネクライネナハトムジークで読んでた。辛うじて覚えててよかった。